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小さな彼の世界で、奪うことは息をすることと同じ事。
目の前に広がるのは黄金の砂だけ。
大昔に建てられたのだろう石レンガで積まれた廃墟が、彼と、その民族が生活する世界だった。
父は言う。
「東の都市と西の帝国を繋ぐ道はここしかない」だから「奪われても仕方がない」のだと。
父は、彼が視界に入ると冷たい視線を向け呪言を吐く。
「お前など要らなかったのに」
床に伏せる母は、瞳孔の開いた眼をこちらに向けることなく呪文を唱える。
「坊やが生まれたのよ」
彼は狩りに出る父達の後ろをついて行った。
向かい風に舞う砂によって足止めを食らう獲物の前に姿を現して追い風を味方に金品を、資材を、食料を、命を、奪っていく。
初めのうちはその様子をただただ観察した。
風の流れを読むにはどうすればいいのか、
獲物の隙を狙うタイミングは、
確実に仕留められる部位は、一撃は、速さは、
彼の目の前に誰のものだったかはわからない吹き飛ばされた剣が突き刺さる。
柄を握りズッと引き抜くと、想像していたよりもそれは重たかった。
空を切ると風が鳴く。
得た知識が感覚として記憶していくことに鳥肌が立つ。
ふと、父の呻き声が聞こえた気がした。
視線を先に戻すと狙っていた獲物には護衛がついていたのだろう、二匹の銀の生き物が地に伏した父に剣を振り上げていた。仲間達は呆気にとられていて動けないでいる。
そう気づいたときには勝手に体が動いていた。
足元には腕のない銀の生き物の死体が二匹。
生暖かい液体が目に入って、すこし痛い。
ぬるぬると気持ちわるいので顔を拭って、父を見る。
「・・・・・」
父は何も言わなかった。