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レヌさん企画のムゲンwarsに参加させていただいてる願望の勇者の設定や、 お話を載せるところ。たまに絵とか漫画載せるかもしれない^▽^
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 あれから3年の月日が経ち、願望は16になった。栄養不足から身長もさほど伸びず、女性特有の柔らかさもない痩せ細った身体になっていた。

3匹の狼達と常に行動し、その日をただ生き抜く為だけに狩りをし、食を取り、寝るだけ。

自分には名前は無いが、3匹の狼を呼ぶ際に区別をつける為、名をつけていた。

毛色が黒い狼を『夜(よる)』、白い狼を『月(つき)』、白黒の斑模様を『星(ほし)』と呼んだ。知識があまりない為、名前は本当に簡単なものだったが、呼んでやると3匹は嬉しそうに尾を振り願望に擦り寄ってきた。

しかし愛しいという感情を知らない願望は、その度胸が苦しくなり、あまり狼に甘えられるのは苦手だった。



そんな生活は突然に終わりを迎えた。
この日が願望を変えてしまう、大きな原因となるのである。

いつものように狩りをしに狼達と共に砂漠を歩いていた時、焦げ臭い匂いの中に血の匂いが紛れている事に気がついた。

「この匂いがする方角は…」

星がその方角へ向き遠吠えをする。

父親の、仲間が住む集落の方だ。
よく目を凝らせば黒い煙りがたっているのが分かった。血の気が一気に引いていく。

自分を捨てた仲間達、けれどやはり願望にとって故郷であるあの集落を、見捨てる事は出来なかった。

息を忘れる程無我夢中で駆けた。後を追う狼達。

着いてみれば、故郷はすでに全壊していた。石で積んでいた家は粉々に砕かれ、仲間達は血を流してそこら中に倒れている。

ふと話し声が聞こえ、音を殺して近づいてみる。そこには拘束され膝をついて首を差し出している父親の姿と、あの日殺した銀の生き物が何十体も父親を囲んでいた。

「ようやく捕まえたぞ黒き肌に秘色の髪の砂族、お前が頭領だな?」
「色々好き勝手やってくれていたようだがこれで終いだ。その首持ち帰らせてもらう」

一匹の銀の生き物が剣を引き抜き、父の首にそれを当てがう。あの日と同じ光景だった。

父親の言葉が甦る。ここで動けばまた同じ事の繰り返しになるのではないか。また否定されるのではないか。動けない。見ていることしか出来ず、ただ立ち竦むしかなかった。

けれど俯いていた父親が顔をあげた。

そして、

願望の姿に気づき、

目が合った。



「ああ我が娘よ!よく来てくれた!!父を助けよ!!!こいつらを殺せ!!!!」


唖然とした。

願望には何を言っているのか、すぐには理解ができなかった。その間にも銀の生き物達が願望の姿を探し、一匹また一匹と振り向いていく。

「何をしているううう!!殺せええええ!!!」

やっと父親の叫び狂う声に弾かれるようにして前に進み、投げナイフで銀の生き物の急所を確実に狙い当てる。

前方の仲間が倒れていくのを呆気にとられている内に足元に滑り込み、小型ナイフで関節部分の神経を切っていく。

陣形を組み願望を囲おうとしたところで、夜、月、星が襲いかかっていく。

すべてはいつもの狩りと同じだった。

同じなはず、だった。




夜が鳴いた。
ズシャリと何かが斬られる音と血吹雪。
振り返れば、ゆっくりと地面に倒れていく、夜の姿。

夜は願望のすぐ後ろにいた。
夜の後ろに、銀の生き物とは違う、黒い生き物が剣を振り下ろしている。

夜がとっさに庇わなければ、願望が斬り殺されていた。



飛び散った血のせいじゃない。赤色が目を、頭を染めていく。気がつけばナイフを手に黒い生き物へ願望は飛び掛っていた。

剣が振り上げられるよりも前に、速く、その首に突き立てる、気だった。だが黒い生き物は剣を下げた勢いをつけたままくるりと回転し、威力を持った蹴りが願望の脇腹にゴキリッと入る。

血反吐を吐き、そのまま瓦礫の中へ蹴り飛ばされる。肋は何本か折れ、硬い壁に頭をぶつけた衝撃で脳震盪が起きていた。

チカチカする視界の中、黒い者が近付いてくるのが分かった。けれど体は動かない。


月と星の唸り声が聞こえた。
その意味が分かり、駄目だと命令したいのにまともに声も出ず、時既に遅く2匹が黒い者に飛び掛っていた。

成す術なく争う音だけが聞こえ、次は月の声が消えた。そして追うように星が。

目から熱いものが溢れ出る。もうずっと忘れていたのに、失くしてしまったと思っていたのに、どうして今頃。

滲んだ視界が黒で占める。これが自分の最後だと悟り、そして深く、目を閉じた。









目が覚めると冷たい石床に倒れていた。冷めていく脳でここが集落ではないことに気付く。重たい身体を起こして辺りを見渡すと、石で固められた四角い部屋、目の前には鉄の棒が一面縦に突き刺さっている。

立ち上がろうとすれば手首、足首に何かが引っかかり前のめりに倒れ込んでしまう。その衝撃で脇腹にズキズキとした痛みが蘇ってくる。

そう、自分はあの時黒い生き物に殺されたはずだ。ならばなぜまだ痛みがある、息をしているのだろう。

「起きたみたいだねぇ」

思いにふけっていて鉄の棒の先に何者かが立っている事に気付けなかった。威嚇を込めて言葉を発しようとしたが、口に何かが詰められていてあ゛ーとかう゛ーとしか声が出ない。

「もしかしたら自害されちゃうかもしれないから手足は鎖に繋いで、口には猿轡をつけさせてもらったんだよぉ」

その人間の顔が小窓から差し込む外の光によってようやく見ることができた。

無駄に肉がついた気持ちの悪い顔の男だ。
砂漠での生活で嗅覚が鋭くなっていた願望には汗臭いキツい香りが鼻を刺激し思わず顔をしかめる。

「君の砂族には前から興味があってねぇ、珍しい肌に秘色の髪。結構良い値で売れるんだよ、女性だけだけどねぇ」


ぶふふと醜く笑う男が近くにいた銀の生き物に何か指示をした。すると鉄の棒の一部が開き、男が入ってくる。

「だけど君は特別中の特別だよ、どの砂族よりも美しい髪と容姿。あの日ね、僕がいたから君は助かったんだ、感謝しよーねぇ」

汗ばんだ手が願望の頬を撫でた。それが意味するものをまだ知らなかったが背筋がゾッとしたのは分かった。

だが、男が次に発した言葉で願望は自分の目的を見つける事になる。


「君だけは特別。僕のペットにしてあげる。良い子にしていたら何でもあげるよ」




―…何でも…?―




暴れる様子もなく、じっと自身を見つめる姿に気を良くしたのか男は猿轡に手をかけ、願望の口から取り外す。

「…貴方は何でも持っているの?」

「そうだよぉ、僕はなんてったって『国王』だからねぇ」

「国王は、愛も、心も、生きる意味も、全て持っているの?」

「あらら意外と寂しがり屋さんなんだねぇ、そうだとも。愛は腐るほど手に入るし、心も金さえ見せればあっという間、生きる意味なんて僕の誕生祭ともなればみんなが頭を下げてお祝いしてくれる、全てが僕のものさぁ」


「…そう、そうなんだ、国王にはその資格があるんだ」


だから父親は身を呈して教えてくれたのだと分かった。資格が無いものは何も得られない、奪われるだけだということを。


―だから、自分も奪われてしまうんだ。

―だったら、奪い返せばいい。奪ってやればいい。


―そして私が、僕が、国王になるんだ。



にっこりと微笑む願望。その笑みは美しくもあり、恐ろしさも秘めていて、男は、国王はより嬉しそうに君をペットに選んで良かった、と最初の贈り物として接吻を与えた…。

 

おわり





『あとがき』

ちなみに願望ちゃんは肋何本か折れてるので、それが完治するまではって〜事で大事な物は最後まで奪われておりません。代わりにファーストキスは犠牲になったのだ…ゲフンゲフン。

こんな感じで物語①に続いて勇者に召し上げられて、現在の願望が誕生しました。おめでとう!

親父はくそやろうです。最後の最後で娘と呼ぶし、だけど名前すら付けなかった娘に助けろ殺せとか言うし。くそですね〜書いて楽しくなるくそでした^▽^

願望ちゃんは夜と月と星を失った事がきっかけで元々かけていた心が真っ二つに割れてしまいました。人間の防衛本能か、3匹の狼のことは忘れてしまっています。もちろん、あの人の事も。

そして、あの人とは、勇者であり、のちに出会う事になる、翡翠くんです。

ただ、翡翠くんは気付きます。あの日願望達にあげた母狼の骨から作った牙の首飾りが鞘にくくりつけられているのに気付いて〜そして死んだと思っていた◯◯の登場によって〜おおっと、ここからはまた後日話です。

しかしあの日、翡翠くんに少しの希望を与えた願望が、後に自身の希望を無くすこの…っ、この…っ(興奮

可哀想な子に思えてしまうこともないようなあるような結局よく分からん感じになってしまいましたが、私からすると願望は甘ちゃんでしかないです。傷付いた心を埋めたいが為、考えることを止めて人の大切なものを奪って満たされようとする行為は許されるものじゃないなと。だから後々い〜〜〜〜っぱい苦しんでさらに傷付いて、大切なものに気が付いて、また苦しめばいいと思います。


ん?願望ちゃん大好きですよ^▽^


では、ここまで読んで下さってありがとうございました。次は願望ちゃんの能力を詳しく作って、まとめたものを、書けると、イイナ(まさに願望
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母親が急死した。
願望が13歳の時だった。

狼たちに食料を届ける一方で母親にも持ち運んでいたが、衰弱し食事も次第に取れなくなって、朝願望が目覚めた時には冷たくなっていた。

仲間に助けを求めたが誰も手を差し伸べてはくれなかった。数日後に狩りから帰ってきた父親にも、母親が死んだ事をしがみ付いて伝えたが地面に蹴り飛ばされるだけだった。

軽くなった母親の亡骸を背負い、砂漠に沈ませて、ただ一人泣き続ける。

目が赤く腫れた願望がやってきたのを確認した3匹の狼達はそっと寄り添い、陽が落ち、また陽が昇るまでずっと一緒にいたのだった。


母親が死んでからさらに仲間から迫害を受け、毎日絶えず傷を願望は負うようになる。食料を盗んでいた事がバレさらに暴力は悪化した。けれどここで負けて自分が死んでも何も変わらない、それどころか3匹の狼を見捨ててしまうことになってしまう。

生きる為には自分でなんとかしなければならない。

暴力を受ければ反抗し、相手の腕や足に噛み付いた。食料も自分で調達するため、初めは尖った石一つで砂漠を渡り歩いてきた旅人を襲い、武器になるナイフを奪った。

次に3匹の狼にも狩りを教えるため共に砂漠で行動し、旅人を襲ったり又は蠍やトカゲなどを捕まえて食料にした。

そしてあくる日、父親達が狩りという名の強盗をしに集落を出た後、後ろをつけた。

向かい風に舞う砂によって足止めを食らった獲物の前に姿を現し、追い風を味方に金品を、資材を、食料を、命を、奪っていく。初めのうちはその様子をただただ観察した。


風の流れを読むにはどうすればいいのか、

獲物の隙を狙うタイミングは、

確実に仕留められる部位は、一撃は、速さは、

そして願望の目の前に誰のものだったかはわからない吹き飛ばされた剣が突き刺さる。柄を握りズッと引き抜くと、想像していたよりもそれは重たかった。

空を切ると風が鳴く。

得た知識が感覚として記憶していくことに鳥肌が立った。

ふと、父の呻き声が聞こえた気がした。
視線を先に戻すと狙っていた獲物には護衛がついていたのだろう、二匹の銀の生き物が地に伏した父に剣を振り上げていた。仲間達は呆気にとられていて動けないでいる。

そう気づいたときには勝手に体が動いていた。


足元には腕のない銀の生き物の死体が二匹。
初めて人を殺めた瞬間だった。
生暖かい液体が目に入って、すこし痛い。ぬるぬると気持ちわるいので顔を拭って、父を見た。


「・・・・・」


父は何も言わなかった。






何かが変わるんじゃないかと、期待もしていた。もしかしたら父が自分を認めてくれるのではないかと思っていた。

けれど、願望がした事は父親の自尊心を傷付けただけだったのだろう。

「ここを出ていけ」

先に集落に戻っていた父親に告げられた一言。さらには剣を喉に突き立てられている。


何故?という言葉が頭の中を占めていくが願望にはその答えが分からない。

どんなに迫害を受けようが、この集落は願望にとっては自分の生まれた場所で、自分の居場所だった。3匹の狼が住むあの廃墟の家で暮らすことも出来たのに、結局戻ってきてしまう程。

「所詮は女、男の上には立てずただ慰め者になっていればよいものを思い上がりおって!お前には何もやるものか、そんな資格はお前には無いと知れ!資格のある者だけが全てを勝ち取るのだから!」

父親の吐き捨てた言葉が突き刺さる。女であることがそんなにも許されない事なのか。資格がなければ何も得られないのか。居場所も、母の愛も、父の心も、生きる意味も、全て。





何もかもが無くなってしまった願望は、廃墟の家へ向かった。そういえば、母が死んだ時にもこうして狼達のところに行ったなと思い出す。ただあの時と違うのは、涙は一滴も出なかった事だ。

少しだけ、あの人の瞳の意味が、わかった気がした。





つづく
願望は砂漠に住む盗賊の、その中でも頭領の娘として生を受けた。

 
だが、頭領が望んだのは自身の座を継ぐ男子。そして願望が生まれたことによって弱りきった母親は床に伏せ子を産めぬ身体となり、父からも、周りの仲間達からも迫害を受けるようになった。

唯一よりどころの母親も精神を病み「ああ愛しい坊や、かわいいかわいい私の息子」と願望の事を呼ぶようになった。

この時願望に名前は与えられていなかった。

集落の角に追いやられた母親と願望は生きるのに精一杯だった。弱っていく母のため幼い願望は集落を抜けて砂漠の世界に足を踏み入れ、食べ物や薬になるような植物を探し歩いた。

そんなある日、いつものように砂漠を歩いていると激しく争う獣たちの声を耳にする。

砂影からそっと覗くと、砂漠に住まうゴブリン達と狼の群れが殺し合っていた。

次第にゴブリン達のほうが優勢となり、次々と狼が倒れていく。その中に少し小柄な狼を守る1匹の狼がいた。だが無情にもゴブリン達が彼らへと襲いかかろうとしていた。

あまりにも殺気めいた空気と恐ろしさに足がすくみ、願望にはどうすることもできなかった。何もできない自分に悔しさを感じ、目を背けた、その時だった。

自身の横を目にも留まらぬ速さで何かが駆け抜けたと気づいたときには、ゴブリン達の断末魔が聞こえ、あれ程ビリビリと感じた殺気は消え、静寂が訪れた。

願望が目にしたのは、折り重なるように倒れたゴブリン達と、横たわる二匹の狼、そして狼の側に立ちすくむ人間。

風が吹き、長い髪で隠れていたその者の顔が見えた。


見た事もない白く透き通った肌に美しい容姿。目を奪われていた願望だったが、2匹の狼がその片隅に見え慌てて駆け寄る。

その人は言った。

「間に合わなかった。せめて身ごもっているメスの狼の方だけでもと思ったが、ゴブリン達が投げた石槍が喉に当たってしまったようだ…今はまだ辛うじて息をしているが、もうすぐ事切れるだろう」

見上げて覗いたその人の顔は悲しそうなのに、涙は無くその目は遠い何かを見ているようだった。


―…助けたい。
狼も、この人も。


助ける術など知識のない自分には思い浮かばない。だけど諦めたくはない、何もしない、出来ないのはもう嫌だ…―

砂避けのために首に巻いていた長い布を脱ぎ捨て、狼の傷口を抑える。流れ出る血を止めたくてとっさにした行動だった。

「どうしたら助けられる?…教えて…っ」

真剣な眼差しを向けた願望の姿が、影を落としていたその人の目にようやく映ったように見えた。

願望の布を借り手早く止血処理を行うと、手持ちの薬草や簡易治療道具を使って出来る限りを尽くそうとしてくれているようだった。願望も狼の意識が途切れぬように声を上げて励まし続ける。


ほんの一瞬のことだった。


動けないはずの狼が首を持ち上げ瞳孔が開いたままの目で、何かを伝えるようにその人をじっと見つめる。

その意味に気付いたのだろう、その人は腰袋からナイフを取り出し、狼の大きく膨れ上がった腹に押し当てた。

「どうするの?」
「子を取り出す。」
「そんなことしたら、この狼が…」
「母親が、そう託したんだ」

母が望んだこと。
その言葉に自分を重ね、願望は覚悟する。

慎重に腹を割いていく。どっと傷口から血が溢れ出るが痛覚がもう麻痺しているのだろう、狼はただヒュー…と鳴くだけだった。そして袋状の肉に切り目を入れた瞬間、中から水が流れ出て、ともに丸い子狼が数匹見えた。

願望にとっては全てが衝撃的な情景だったが、淡々と母体から子狼を切り離し、息を与えていくその人の姿に正気を保ち、手伝いに入る。

その後、全部で5匹の子狼を孕んでいたようだったが、その内の2匹が鳴くことはなかった。願望が母親の狼に元気に鳴く子狼を見せると、安心したように深く息を吐いて、そして事切れた。



その人はしばらく近くの砂に侵食された廃墟の家に留まり、3匹の子狼の世話をしてくれるようだった。願望も集落に戻り、旅人から強奪した食糧を保存している小屋へ忍び入り、ミルクと食料を少しずつ盗んで届けるようになった。

こんな事が仲間にバレてしまえば、体罰は免れない。以前の願望であったなら絶対にできなかったことだ。けれど、あの狼とあの人と出会った事で願望は大きく成長し、生きる術を学んだ。



しばらくして3匹の子狼が自分で歩けるようになった頃、その人は行かなくてはならない、と言った。その人には目的があるようだった、それが何なのかは結局聞けずじまいだったが。

願望は約束した。


「この子達は私がちゃんと育てる、だから行って」


本当はずっと居て欲しかった、願望にとって初めての友達、だったから。

だからこそ分かってしまった。その人の、あの時見えた遠い向こう側をうつす瞳。ずっと追いかけているのだろう何か。

引き止められるものを願望は持っていない。

せめて心残りがないように安心させて見送ることがその人の為になるのだと自分に言い聞かせ、笑顔を見せた。

するとその人は腰袋から何かを取り出し、3匹の狼へそれぞれ首にそれをかけていく。そして願望にも。麻紐で簡単に作った首飾り、飾り部分は尖った骨のようなものがついていた。

「母狼が死んだ時、供養のため火葬しただろう。その後に残った骨から牙を探して作ったものだ。子を想う母狼の強い愛が、御守りとしてきっと君達を守ってくれるはずだ」

優しく頭を撫でてくれる大きな手に、安心させるはずが自分が安心させてもらってしまったと、願望は流れた涙に気づかれないよう俯いて応えた。


最後の日、精一杯の感謝を伝えて、その人の背中が見えなくなるまで手を振ったのだった…




つづく


小さな彼の世界で、奪うことは息をすることと同じ事。

目の前に広がるのは黄金の砂だけ。
大昔に建てられたのだろう石レンガで積まれた廃墟が、彼と、その民族が生活する世界だった。

父は言う。

「東の都市と西の帝国を繋ぐ道はここしかない」だから「奪われても仕方がない」のだと。

 

父は、彼が視界に入ると冷たい視線を向け呪言を吐く。

「お前など要らなかったのに」

床に伏せる母は、瞳孔の開いた眼をこちらに向けることなく呪文を唱える。

「坊やが生まれたのよ」

 

彼は狩りに出る父達の後ろをついて行った。
向かい風に舞う砂によって足止めを食らう獲物の前に姿を現して追い風を味方に金品を、資材を、食料を、命を、奪っていく。

初めのうちはその様子をただただ観察した。

風の流れを読むにはどうすればいいのか、
獲物の隙を狙うタイミングは、
確実に仕留められる部位は、一撃は、速さは、

彼の目の前に誰のものだったかはわからない吹き飛ばされた剣が突き刺さる。
柄を握りズッと引き抜くと、想像していたよりもそれは重たかった。
空を切ると風が鳴く。

得た知識が感覚として記憶していくことに鳥肌が立つ。


ふと、父の呻き声が聞こえた気がした。
視線を先に戻すと狙っていた獲物には護衛がついていたのだろう、二匹の銀の生き物が地に伏した父に剣を振り上げていた。仲間達は呆気にとられていて動けないでいる。

そう気づいたときには勝手に体が動いていた。



足元には腕のない銀の生き物の死体が二匹。

生暖かい液体が目に入って、すこし痛い。
ぬるぬると気持ちわるいので顔を拭って、父を見る。


「・・・・・」


父は何も言わなかった。


その日は雲一つない晴天なんだなと思った。

昨日の大雨のせいでまだ残っている目の前の水たまりが空を映していたので、それを理解することができた。あとはそこに不釣合いな大きな刃物が自分の首元に向けて吊り下がっている事も。



 
 

「本日これより死刑を執行する!」



野太く高圧的で不愉快な大声が処刑場に響き渡る。

無理やり頭をもたげると首の固定具が喉をギチリと締め上げるがもうそんなことはどうでも良い事だった。どうせもう死ぬのだから。

「・・・ーーよ、誠に残念だ」

見上げた先、遠く向こうでこちらを見下す誰よりも着飾った男が話しかける。

「あれだけ可愛がってやったというのに、お前が悪いんだよ」

男の手が見えた。
遠目でもわかる白い布でぐるぐると巻かれたそれは、なんと男にふさわしくない姿か。指じゃなくて顔にすればよかったなあ。そうしたらもっと面白かったのに。

「せめて苦しまずに逝かせてあげよう、残ったお前の身体と綺麗な顔は大事にしてあげるから安心しなさい」

ああ、どうすればそこに立つことができるのだろう?
僕には一生手に入れることができないのだろうか?
もっと良い子にしてお勉強すればよかったのかなあ?
それともこいつら全員殺しちゃえば良かったのかなあ?

ああ、だめだだめだ
全然足りない。
ぜんっぜん足りないよ。
もっと、もっと欲しい。
この手に入らなきゃ納得いかない、
満足できない、


しかし、無常にも男は処刑執行の合図である怪我の無い手を振り上げる。
そしてゆっくりと振り下ろしていく。


ゆっくり、ゆっくりと、もう瞬きを5回ほど繰り返した。

だが一向に頭上の刃物が落ちてくる様子もなければ、先程まで野次馬の声で溢れていたのが嘘のように静かだ。男の動きは完全に止まっていた。

と思えば、意識が誰かに引っ張られるように遠のく。そして完全に気を失う直前に聞こえた声だけははっきりと覚えている。


          「おめでとう、あなたは選ばれました。」
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プロフィール
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